会社のトイレに紙がない

 

 日本の会社でトイレに入って紙がなかったら“何だこの会社はトイレの管理もなっておらんのか”と批判を受けることでしょう。 でも私の住むこの国マレーシアの多くの会社では 個室の全部に無いか一ヶ所のみというのが一般的です。別にウオシュレットが普及してそうなった訳ではありません。

皆さんはこの国の人たちが紙のないトイレに入って用を足した後どのように始末しているか不思議に思いませんか。

 

 前回申し上げた通り この国マレーシアは複合民族国家と言われでおり その人口比率はマレー系60%、中国系30%、そしてインド系10%になっております。中国系の人たちは用を足した後日本人と同じプロセスを取ります。一ヶ所だけあるというのは中国系の会社か 中国人が比較的良く利用する場合によく見かけられます。勿論ホテル、空港の様に外国人がよく出入りする施設ではトイレットペーパーはもとより 手を洗った後のペーパータオルまで完備されています。逆に銀行や航空会社のように一流会社であっても もしくはそこそこ高級なレストランであっても客の大部分がローカルであれば 設備の質に差はあれ紙が置いてないのが普通です。

 

 では具体的にはどのようにしているのか説明します。 まずトイレに入って気が付くのは便器のそばに水道の蛇口が必ずあり お尻に届く程の(約1メートル位)ビニールホースが付いているか プラスチックの手桶が用意されていることです。用を足した後この水をお尻に掛けながら左手の中指を使ってきれいにします。 この蛇口とホース又は手桶は役所の規則らしく トイレットペーパーの設置されているホテルでも必ず用意されています。 町の金物屋さんにはホースの先に取り付けるワンタッチのシャワー式金具が売られており 一般家庭やホテルでは良く見かけます。常夏のこの国では暖かい水の必要がない為ウオシュレットの代用として十分通用しているのだと思います。この手を使った洗浄の方法を知った誰かが“紙を使い手を汚さないか 汚れた手を石鹸できれいに洗い流すかの違いだけで結果は同じ事”と言った事を思い出しますが 良く考えてみると成る程なと納得出来そうです。

 

 私は中学生時代より大地主(痔持ち)でよくトイレから顔をしかめて出てきたものでした。いわゆる脱肛というやつで時々入浴の時洗い場できれいにして押し込んだ記憶がありますが当時は何かとても恥ずかしい事をしていると言う記憶がありました。 今では私もトイレの時にはこの習慣が板に付き あの頃痔で苦しんだ記憶が全く嘘のようです。日本に戻った時などペーパーだけで始末しますがきれいに始末した感じが少しもありません。習慣とは全く恐ろしいものですね。 ともあれ痔病でお悩みの方は今はどこにでもウオッシュレットが有る筈ですから一度試されたら良いかと思います。

 

 では何故水を使うのでしょうか? 水を使って用を済ませるというのは一つには宗教(イスラム教)から来ています。 イスラム教義に礼拝前や用足しの後又はセックスの後始末には水で体を清める定めになっており アラブの国々の様な水のない又は水が貴重な場合は砂、木の葉、石等で代用しても良いとなっています。大事な男のシンボルを木の葉や石でと言う訳にはいきませんが一昔前からチリ紙という便利な物が有りましたから問題ないでしょう。西欧や寒冷地に住むイスラム教徒にとって温水が無い環境ではかなり厳しい教えになるという気がします。 余談になりますがイスラムでは小水後には前も水で洗い流すと言う教えがあり男女を問わず洗います。ですから小便くさい小娘と言う言葉は有りません。

もう一つにはインドの様に国もしくは民族の習慣として水を使うことが定着している場合があります。ご承知のようにインドでは数え切れない程の民族、言語、宗教がありますが 国が赤道に近く位置し一番寒い北部でも気温が10度以下には下がらないので用を足した後普通の水をバシャバシャ掛けても問題ないのでしょう。そしてマンデーという河に飛び込んで体を清め参拝する習慣が在る事からも水で清めるという発想は理解できます。

 

 そもそも人類は何時の頃から用足し後の始末を始めたのでしょうか 学生時代の文化人類学の講義で教授がそれまで集めた各国のトイレットペーパーを披露してくれましたが その時紙の貴重な時代には摘み取った木の葉をトイレに常備していたと聞いた記憶があります。人は大昔は動物と一緒で始末の必要がなかった筈ですが 何時の頃からか多分上流社会のマナーとして始まり木の葉、石、ピンと張られたロープ等色々な物がが使われ始めたのでしょう。

 

 お尻を清めた左手は一般的に不浄な手とされ 食物を左手で摘んで口に運んだり 子供の頭をなでたりすることはこの習慣を持つ人々の間ではタブーになっています。 海外に出かけたり滞在する人は気を付けたいものです。

トイレの話から突然食事の事に話が飛びお叱りを受けそうですが 食事の作法に左手が関係していますのでお許し下さい。この国マレーシアのインド人とイスラムのマレー人は食事の時器用に右手の指4本(小指を除く)を使いますが どうも主食の米に関係あるようです。米は亜熱帯地方で主に生産されていますが 南アジアの米と東北アジアの米の食感が少し違うようです。 タイ米は基本的にはおいしい米なのですがボソボソした食感が日本人に合わなくおいしくなく感じられるのです。 日本や韓国やカルホルニァの米はチャーハンに向いていないと言われているのはこの地方の米に少し粘り気のあるのが原因の様です。 マレーシアの赤道に近い地域では米は生産出来ず タイ国境に近い北部の米とタイやベトナムからの輸入米でこの国の需要が賄われています。 ボソボソとした米を中国人が持ち込んだ箸と茶碗でかき込むか手で食べるしか方法がないのかもしれません。 今この国の国民の半分が携帯を持ち歩き一戸に車が二台も三台もある時代ですが 家庭で食事をする場合スプーンやホークを使わない場合が普通です。 彼らは手を使わない食事より手で食べた方がおいしいと言います。勿論改まったホテルやレストランの食事には箸 スプーン ホーク等を普通に使いこなします。満足な食器を揃えられない貧しかった大昔の習慣が 西欧社会のマナーと言う観点から少し恥ずかしく感じられるようですが まずはおいしく食べるを優先させると言ったところでしょう。

 

追記: 食べ物に関する話題は次回にします。

石田 勝  マレーシア住在

ご意見がありましたら下記 メールアドレスにお寄せ下さい。

masaru.ishida@konsortium.net