石田さんのマレーシア便り

この国の国語はどうなっているの ?

 前回紹介致しました様に この国マレーシアの中国人はその出身地別に福建、広東、客家、潮周人等

に別れています。 インド人も同様にタミール、マリャーリ、テルグ、シンなど多彩なインド人がこの国に移

住して来ました。 又インドネシア、フィリッピン、バングラディシュ等々の多くの外国人労働者が住んでい

ます。 更に私のような日本人を含めた数え切れない外国人を加えると 何と50を超える民族がこの国に

住んで居ると言われています。 日本も多くの外国人が住んで居ますが絶対的多数が日本人で かなり

多く住む韓国人でさえ多分一パーセント以下の筈でしょうから比較にならないでしょう。 その異なった

中国系、インド系民族の母国語や宗教(イスラム、ヒンズー、仏教、キリスト、スキー等々)はバラバラです

から この国をまとめる事がいかに難しいか想像すら出来ません。 この様に色々な中国人、インド人が住

んで居ると言う理由で 中国人同士、インド人同士でもお国言葉を使ってコミニュケーションが取れない事

があります。 例えば同じ中国人同士でも中に違う出身地の中国人が居るとします。 我々外国人には全く

見分けが付きませんが 彼らにはその雰囲気か何かで出身地が異なることが判るのでしょう。 そこでこの

国の共通語のマレー語か英語で話し始めるのです。

 

 この国の小学校での授業はマレー語で教えますが 小学一年生から英語の授業があり、二、三年もする

と片言ながら会話することが出来ます。 元々イギリス植民地で長い間英語が公用語として用いられ 1966

年頃までは学校の授業も英語で行われていました。 それで40歳以上の人々はお年寄りまで含め英語を

普通に話します。 近年国民のマレー語に対する学力が落ちたと言う危機感から 政府は中学5年生まで

はマレー語で教えますが 短大、専門学校、大学では基本的に全て英語を使って教えます。 そんな訳で

英語に対する国民の抵抗は全くありません。 テレビ番組の洋画も大抵マレー語の字幕が出ますが 何故

か英語の字幕が出るマレー番組が有ります。 又英語の番組でも面倒なのか簡単な会話の字幕は省略す

るし アメリカのトーク番組などはわかるもんだけ見ろと言う感じで そのまま垂れ流しています。 マレー番

組でもタレントが英語番組なのかマレー語番組なのか途中で判らなくなり 突然英語でベラベラ話始め慌て

てマレー語に戻す事などしょっちゅうあります。 それでも会場のお客は何の抵抗もなく 相槌を打ったり笑

い転げたりしていますから 英語に対する受け止め方が日本とは大分違うのでしょう。 つい最近の事です

がローカルのスーパーで買い物をした時 ちょっとお腹が空いたので片隅に海苔巻きを放り込んでレジに

出したところ いきなりAre you Japanese ? と訊かれ慌てた事がありました。 お寿司を見てとっさに私の事

を中国系マレー人でないと思ったのでしょうが 普通のスーパーの従業員でさえすぐに英語が口に出るとい

うことは 母国語以外で会話することがこの国では特別の事ではないと言う証しなのでしょう。 

 

 インドでは公用語がヒンズー語ですが 日本と比較出来ない程理解しにくい様々な方言があり 又マレー

シアよりもっと長い間イギリス植民地であった事も影響して 今でも英語が第二の公用語の様になっています。

 ですからこの国に来たインド人はマレー人以上によく英語を使います。 中国は北京語が公用語として定

着していますし 漢字は共通ですからこの国に渡ってきた広東人主流の中国人は広東語か北京語で会話を

しているのではないかと思います。 私立の中華学校に行かない一般の中国人でも英語、マレー語、北京語

が話せないと 就職や商売の機会を失うと言う事で仲々大変だと思います。 又小学校に入った途端に漢字

やインド文字にローマ字を並行して習わなければいけないというのも 子供にとって大変な事だと思います。

 

 日本にいる時にシンガポールの子会社のある中国人が“私は福建語、広東語、北京語それに客家、マレー

語に英語に日本語が話せます。”と何気なく話すのを聞いて“こいつの頭の中はどうなっているんだ”と思い

ましたが 日本人の学者で10万語 普通の人でも5万語以上の言葉が記憶出来ると読んだ事があり 彼は

母国語の福建語にその他英語、マレー語、広東語等々を各五千から一万語づつ覚えていたとすれば 六つ、

七つの言葉でも日常会話はどうって事はないなと思いました。 その点日本人は日本語の単語を沢山知って

いますから 古文、公家、江戸時代の侍、町人言葉 更に大阪弁や東北弁まで何でも理解できるのだと思い

ます。 又人を傷つけないよう間接的な表現をしたり 言葉を使った遊びや俳句、短歌等の文化が栄えたのは

大多数が高校までの教育を受けマスメディアが多くの方言を紹介しているからでしょう。 ただ狭い日本とは言

えども 沖縄、アイヌの会話は全く理解出来ないのですから 広大な国土と10億以上と言う人口を持つ中国や

インドでは 方言と言えども 外国語と同じ未知の言葉として捉えても当然のような気もします。 

 

 言葉に関するこの国のハンデーキャップは マレー人主体の警察が中国人やインド人の係わった犯罪を

捜査する時 仲々進展・解決しないと言う事です。 空港で車からちょっと離れた隙にかなりまとまったお金を

盗まれた時には マレー人のお巡りさんが手口から中国人の窃盗グループだろうと自信無さそうに言うので 

目の前が真っ暗になりました。 結局犯人は捕まらずじまいで本当に悔しい思いをしました。 又金属加工の

日系会社に勤めていた時は大量の金属材料をトラック単位で二度も盗まれました。 この時はマレー人の

守衛相手に インド人のグループがインドネシァの出稼ぎ労働者を使ってと言う豪華キャストの為 人脈を頼っ

て警察の上層部にまで圧力を掛けましたが 結局捕まらず最後は会社をクビになってしまいました。 

 

 そんなお国でありながら近隣諸国に比べ 全くと言って良い程争いや暴動がない国は珍しいと思います。 

複合多民族国家故に それぞれの民族が必死に自分達の宗教、言語、文化、風習を守って団結しているのは 

移住して来た異民族がこの国で生き残る一つの手段なのかもしれません。 日本の様な単一民族国家と違い

数々のハンデーが有りながら 何とか先進国の仲間入りを果たそうと政府も一生懸命です。 ゴム、椰子油と

スズ位しか資源のない国でありながら 日本や韓国に見習い加工貿易で国を豊かにしようと必死です。 私の

若い頃はタイ、インドネシア、フィリッピン、ベトナムが東南アジアで経済的に抜け出ていましたが 今ではこれ

らの国以上に発展しています。 ベトナム戦争、マルコス体制の崩壊、腐敗したスカルノ退陣、タイにおいては

暴動、通貨危機、クーデターと色々有りましたが 何故かこの国は平和でいつの間にかアジアの優等生に成り

ました。 ただこの国でも経済成長と引き換えに物質主義が横行している事は否定出来ません。 もともと穏健

なイスラム国家で物質よりも精神を優先するお国柄ではあったと思いますが 貧困が争いや病気を蔓延させる

事を考えれば 富める国を目指す政府の方針は間違っていないと思います。 敬虔なイスラム教徒であり医者

でもある比較的清潔なマハテール前首相の二十年以上に渡る君臨は この国の安定と繁栄に大いに貢献した

と思います。

 

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